2007年07月15日

CJ論01:ふたつの「サイバージャーナリズム論」。2003年と2007年の乖離というよりも、ネットユーザー不在の論理に価値はない。

2007年7月15日「サイバージャーナリズム論・それからのマスメディア」(ソフトバンク新書)から発売された。

この本は、2007年のインターネットとマスコミの現状を理解するために、極めて示唆的である。

*

本著作の主宰である歌川令三氏は、あとがきに次のような文章を綴っている。

「本書が、巨大マスコミの知的刺激剤になり、メディア進化にささやかな一石を投ずる役割を演じるのではないか」

歌川氏は、第一線として活躍してきたマスコミ人として、後輩たちに、メッセージを送っている。

無名氏としてインターネットに15年ほど付き合ってきた私は、すべてのネット者に、「インターネットがどうなってしまったのか」について、語ったつもりである。

本著がテーマにしているものは、ジャーナリズム・ジャーナリストである。
だが、これをコミュニケーション・個と読み替えていただければ、見えてくるものは、まさに2007年の日本である。

ぜひとも、書店で手にとって、できれば購入してもらいたい。と願っている。

小.jpg

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「サイバージャーナリズム論」とググれば、東京大機大学出版の「インターネットで変容する報道」という副題がなされたにたどりつくに違いない。

エピソードとして触れられるのは以下…。
時の流れを感じさせる。

・1997年に判決の出た、ニフティーサーブの現代思想フォーラム。
・東芝のクレーマー事件。同、DHC
・2ちゃんねるで起こった動物病院に対する風評問題がエピソードとして触れられている。
・2002年に放送されたNHK番組「奇跡の詩人」の問題。
・ディープリンク
・アイコラ
・映像の引用について、TBSと山口組の裁判。

たしかに当時のことが書かれている。だが、私には、その本が、2003年のムーブメントを著していたとは思えない。

*

同著は、「ジャーナリズムの定義を拡大するとジャーナリズムの本質が見えなくなる」とし、その定義を「時事問題の報道・解説・批評活動」と定義してスタートしている。

だが、そこにおいて決定的な不備がある。と、私には思えてならない。
それは何かといえば、報道・発信する側のステークホルダー(立場・利害)にまみれた、ジャーナリズム論しか展開されていないことである。

同著の目次を見ると、次のようだ。

1.ジャーナリズムとは何か

2.メディアとしてのインターネット

3.インターネットにおけるビジネス・モデル

4.誤報と情報の信頼性の問題

5.匿名性の問題

6.サイバージャーナリズムと著作権

7.人権侵害と営業妨害

8.メディア規制とインターネット

9.サイバージャーナリズムの未来


章の構成から考えるに、6.7.8章で提示されるインターネット言論の諸問題の提示が、この本の目的であろう。

だが、その視点が、インターネット的ではないことに気がつかなければならない。否、おおよそ21世紀の日本に合致する言論ではない。

あらためて指摘するまでもないが、21世紀の日本の産業で、消費者・ユーザーを無視して経営がなりたつものは存在しない。

にもかかわらず、2003年の同著では、言論者・アカデミズム・エスタブリッシュの側から、インターネットというサービスが語られている。

このような製造者たちの論理に価値はない。

*

製造者の論理の専横は、企業を繁栄に導かない。

アサヒビールをビール売上げトップに押し上げた樋口廣太郎氏の経営手法を思い出してみれば分かる。

樋口氏が社長に就任したとき、ビールの味は製造部門のトップが決めていた。そして、製造部門は、ビールの味は素人には分からぬと傲慢になっていた。

樋口氏がまず取り組んだのは、製造と営業の垣根を取り払うことであり、消費者の嗜好を製造に活かすことであった。

アサヒスーパードライはそのようにして生まれた…。
それは、1987年。
まさにインターネット登場の前夜に、日本の産業構造を変えるようなエピソードが誕生していたのである。




突き詰めて言えば、インターネットはサービスである。

インターネットユーザーは、お客さまである。


ならば、業界関係者たちの理論・理屈で、現在・を語ることは、製造者の都合・言い訳でしかなく、不毛である。

*

この本においても、匿名発信は否定的に捉えられている。だが、お客様(被サービス者)に匿名が求められることが非合理であることは明らかだ。

※ 昨今、「爆発するソーシャルメディア」で言及されるようなCGM(消費者参加型メディア)といえども、参加者たちが運営者にとって、客でないと断言できるようなケースは存在しない。

勿論、製造者であることと、顧客であることは、特権としては等価。その立場も大きく変貌していることは認めるとしても…。

*

同著の執筆者たちの多くはアカデミズムという、マーケットと不連続であり、寡占状態にあるサービス者の代表(エスタブリッシュ)に過ぎない。

そのような立場でしかない彼らが、ユーザーが発言することを、被サービス者(顧客)のサービス者への仲間入りと誤認し、それが新しい競合相手として敵愾心を燃やしている…。


だが、そのようにインターネットを捉えるのは、事実誤認である。

被サービス者が、メディアから報酬を得ようとも、それはサービス券を貰っているに過ぎない。どんなに対価が得られようと、直接経営に参画できなければ、お客様としての立場は変わらないのである。

ネットユーザーは、発言しようと発信しようと、ユーザーのままなのだ。ユーザーが匿名で何を言おうと、サービス者たちに反抗する権利・合理性・妥当性はない。

*

サービス者と被サービス者の存在割合は、1%対99%。もしくは、もっとサービス者の存在割合は低い。

ならば、どう考えてもサービス者の論理が、インターネットの今後を導いていくとは思えぬ。

時事通信社の湯川鶴章氏は、「メディアとはコミュニティーである」と指摘する。


コミュニティーが成立条件は対話である。
サービス者が被サービス者との対話を拒むのならば、それはコミュニティーではなく、レクチャー(講義)の場である。

同著の執筆者たちは、アカデミズムの人達たち。
私が、2003年の「サイバージャーナリズム論」本から感じる、取り付くしまのなさの源泉は、そのあたりにあるのかもしれない。



インターネットをサービスとらえたとき、インターネットの本質が見えてくるのではないか…。

サービス業たるインターネットには、さまざまなフェイズがあっていい。


*

入会資格の厳しい会員制の倶楽部もあっていいし、道端の叩き売りのような商売もあっていい。

ウェイターがかしづいてくれる高級フレンチがあってもいいし、食べるのが遅いとどやされる大衆食堂も否定されるではない。

かつての六本木食堂のように、戸棚から料理をとってレジにすすむようなキャフェテリア方式の飯屋もあっていい。そして、私のように、100円バーガーを買ってきて、スーパーで買ったスライスチーズをはさんでチーズバーガーにすることだって許される。

それがインターネットの世界である。

*

インターネットが入会基準の高く、行動基準も厳格な会員制倶楽部にしたい輩が多いようである。

だが、ウッディー・アレンの映画には、次のようなセリフがあったのを憶えている。

「私に入会を許すような入会基準を持った倶楽部になんか、入りたくはない」。

自己嫌悪癖の強い埼玉県人である私も同感である。

*

最後に、もうひとつ付け加えるならば、「差分のない個同士のコミュニケーションに価値はない」。

自分そっくりの他者と話をして和んでいる…。

それが個の人生としては安逸なのかもしれぬが、それでは社会は動いていかぬし、新しい時代などやってこないのだ。





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この記事へのコメント
トラックバックに際してのご挨拶が遅れまして申し訳ございません。
「春は築地で朝ごはん」というブログを書いております、つきじろうと申します。
「地球人スピリット・ジャーナル」様でのサイバージャーナリズムについての
一連の記事とコメントのやりとりを大変興味深く拝見しております。
スポンタ中村様のコメントがあまりにも面白く、一部、拙ブログ内の「読書メモ」
記事にて引用させていただきました。
もし内容につき問題がございましたら然るべく対応いたしますので、その際は
お手数ながらご一報いただきたくお願いいたします。
事後の申し出となり大変恐縮ですが何卒お許しのほどお願い申し上げます。
Posted by つきじろう at 2007年07月24日 12:43
つきじろう様。

コメントありがとうございます。

素晴らしいブログですね。

そして、ブログ周りでコミュニケーションがある。うらやましい限りです。

わが妻は、絶対味覚の持ち主。私はカミサンの味覚の鋭さに、日々驚嘆するとともに、劣等感の日々を暮らしております。(^^;)

*

そうそう、美味しい情報を一つ。

http://mw17.exblog.jp/4678261

この村田商店のみつまめは最高です。

池上本門寺のすぐそば。

同じ寒天なのに、何でこんなに違うのか…。

求肥って、大福に日持ちをさせるために混ぜるものじゃなかったんだよね。なんとも、美味いッ。

びっくりです。

コメントありがとうございました。
Posted by at 2007年07月25日 03:17
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