2020年07月17日

採録: 日本の「演劇・ドラマ・映画」の吟味法。(ハイパーOZ理論最終形)

その後の考察による変更を6月21日の記事に反映した。閲覧者の利便を考え、再度、アップする。


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最終到着地は以下。

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表紙は以下。
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日本映画の巨匠、小津安二郎監督の遺言に想を得て、映画・ドラマの評価基準を構想した。

これは、大衆娯楽作品の客観的で妥当性のある〈評価基準〉である。

小津安二郎の遺言。
「映画はドラマだ。アクシデントではない」。

          ↓


spontaのハイパー理論。
「映画には、アクシデント型。ドラマ型の二つがある」。


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spontaの考察による「ドラマ成分」は以下のふたつ。

・Loss of Emotion (鑑賞後に、ロスを生む)主人公の感情) 
   → 感情(1味)


・Duel of Passion (情熱がぶつかり合う人間と人間の対決が鑑賞者を引き付ける) 
   → 意志(2味)


小津監督の言うドラマを、spontaは〈狭義ドラマ〉とした。

・・・溝口健二監督の「これはシナリオではありません。ストーリーです」を参考にすると、

それらは、

・ 主人公の〈葛藤〉

・ 主人公たちの〈対立〉


それらを成立させるのは、

・ 個としての主体性 → (※ 驚異的に誇張) → 怪物(3味)

※ 17世紀フランス古典演劇理論の項目「驚異的」を採用。




 
以下は、spontaが定義する〈広義ドラマ〉。

spontaは、小津監督が嫌悪した「アクシデント」を「事件」と言い換える。

・事件(4味)


さらに、17世紀フランス古典演劇理論の項目「内的整合性(登場人物の思想と行動の整合性」の重要さを痛感したので、

主人公の行動原理・行動指針として、

・哲学(5味)

を採用した。


まとめると以下。

【ドラマの旨味成分(5味)】

〈広義ドラマ成分〉

・事件(出来事)

・怪物(人物)

・哲学(行動指針)

〈狭義ドラマ成分〉

・感情(鑑賞後に、ロス感を生む)

志(情熱)


重要なことは、〈5味〉の全項目を満たすことが、「素晴らしい作品」の条件。

〈1味〉や〈2味〉では、「面白さに欠ける作品」である可能性が高い。

※  後術するが、「映画・ドラマは、多様性」であり、〈5味〉を認識していれば、満点を目指す必要は「必ずし」もない。


・「低刺激」ドラマ:「サザエさん」 →  「事件」成分欠如

・「なごみ系」ドラマ:「けいおん!」 →  「事件」成分欠如

・「恋愛まったり・推理まったり」系ドラマ:       →  「哲学」成分欠如

・「アクション純化・特化」系ドラマ:「007シリーズ」→  「哲学」「感情」成分欠如



ただし、〈5味〉を満たせば、(宣伝費・キャスティング費に関係なく)「ヒット作」が完成する。と、断言できる。

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【解説】

「餃子が好き。カレーが好き」という人がいる。だが、

・ 餃子

・ カレー

は、料理名でしかない。 彼らの真意は、

・おいしい餃子

・おいしいカレー

それを食べたい。


映画・ドラマでいえば、

・アクション映画

・恋愛映画

などのジャンル。

映画・ドラマファンは、「アクション映画なら、何でもいい」のではない。


「美味しい餃子」の条件は、

・ パリッととした皮

・ お肉たっぷり

・ ジューシーな餡

などの(食べた人が)「おいしい」と感じる要素。


それを映画・ドラマで考察したのが、〈5味〉

・事件

・怪物

・哲学

・感情

・意志

である。

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コラム:
日本の芸道のひとつ「香道」の最高級の香木「蘭奢待(らんじゃたい)・正倉院宝物」は「5つの香り:辛い・甘い・酸っぱい・塩辛い・苦い」のすべてを満たしている。
凡庸な香木は、「ひとつの香り(1味)」しかない。


「多くの要素」を併せ持つ香木が最上であり、映画・ドラマも同様である。

以下のマークで絶対評価し、

◎: +2(すばらしい)

○: +1(よい)

△: 0 (マイナスではない)

×: −1(ダメ)

数値を加算して、総合点を出す。

総合点の最高点は、+10
    最低点は−1              である。


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コラム:

小津監督の世界的な代表作は「東京物語」だが、非ドラマ成分が混じっている。

・東京観光

・こどもたちの生活の様子(個人医院・美容院・鉄道員)

・老いた母の死

小津的な作品の代表は「晩春」。
婚期を逃した娘(原節子)と彼女を気づかう父(笠智衆)以外の不純物はほとんど存在しない。

しかし、世界的に評価されているのは、〈非ドラマ成分〉を含んだ「東京物語」。



あまりに「ドラマとして〈純化〉する」と、大衆娯楽作品としては魅力に欠ける。

・小津調純化作品:  「晩春」

・小津調ドラマ + 非ドラマ作品: 「東京物語」


閲覧者の利便のために、無記入シートを添付する。

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記入例として、「サザエさん」を取り上げた。

「サザエさん」は、人気長寿番組だが、一家団欒で一緒に見られるように、刺激度は低い。
たわいもないストーリー。

見逃したからといって、TVerで観る人は少ないだろうし、はじめてのオンエアか、再放送かも判別がつきにくい。

三谷幸喜氏は新人時代、「サザエさん」のシナリオを書いたが没になった。三谷氏のドラマツルギー(作劇理論)と「サザエさん」の世界が相いれないのは当然である。

spontaの立場は、「三谷氏の作劇理論」と「サザエさんの世界」をともに否定しない。(ただし、「不味い三谷作品」や、見る価値のない「サザエさん」の回も存在する)
 
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HiOz_sheet_サンプル02.jpg


 
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【ハイパーOZ理論の例外】


・「日常に純化」系ドラマ: 「(たいしたことは)何も起きない」

・・東芝日曜劇場、サザエさん、ドラえもん、クレヨンしんちゃん。


・スタンダード系(1回読み切り)ドラマ:

・・水戸黄門、暴れん坊将軍。


・なごみ系(非刺激系)ドラマ


・・けいおん!、おジャ魔女ドレミ。


・アクション特化(単純刺激系)ドラマ:

・・007シリーズ、ランボー、ターミネイター。


上記の場合、「+5ポイント以下」でも、低評価作品とは限らない。

一般的な連続ドラマでは、「ストーリーが進行しない」と納得できない。
だが、「サザエさん」を観て、カツオ君やわかめちゃんが「(いつまで経っても)中学生にならない」と文句を言う人はいない。

一話完結の「水戸黄門」「暴れん坊将軍」で、「話が進まない」との不評はない。


〈ハイパーOZ理論〉は、

・物語は進行する。

・観客は刺激を求める。

という、「極めて当たり前」なことを〈評価基準〉として採用しているが、そうでない映画・ドラマも少なくない。


(以上)


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【参考資料】


○ アリストテレスのミメーシス理論


ミメーシス論.jpg


近代主観主義には、「クリエイターはオリジナル」との妄念・タブーがある。
結果、模倣・再現である「ミメーシス理論」を否定された。

だが、1990年代以降はポストモダンの時代。時代は動いており、価値観も変化しなければならぬ。

アカデミズムの人たちの「主観絶対」の妄信は、彼らの立場を安定させるので、今も続いている。

だが、「(個の)主観」が「客観」に勝てないのは、当然である。


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○ ルネ・ブレイの17世紀フランス古典演劇理論


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放送大学の青山昌文教授は、この理論は「創作のための理論」であり、「クリエイターを制限しない」。「創作の役に立つ理論」と提唱している。

この理論で一番重要なことは、「〈ありえない〉がないこと」。

「三一致の法則」とは、「時間・場所・筋」が「ひとつ・連続している」こと。
青山教授は、「単一で・統一性があればよい」と現代演劇・映画・ドラマに向けて拡大解釈している。
群像劇であっても、「主筋・副筋の別」がはっきりしていれば許容される。

spontaが注目したのは「内的整合性」。「主人公が哲学を持つ」ことを観客に理解させるのは重要である。

ブルース・リー主演の「燃えよドラゴン」は「考えるな。感じろ」という哲学を持つことで、凡庸なカンフー映画を退けている。"Star Wars"も、フォースという概念が無ければ、ありふれた宇宙戦争映画だ。(それを見切れなかった三船敏郎氏は、出演依頼を断っている)
 
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○ スポンタのT-メソッド


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企画時は、「構成(時間的な出来事)」ではなく、「構図(主要人物の対立の構図)」を粘り強く練り上げるべき。

黒澤明監督・倉本聰脚本家は、「主要人物の履歴書を書く」のを重要とするが、それは「設定を増やすこと」でしかない。
(アクターズスタジオの技法と同じ)

・〈ドラマ〉は「人と人の間に生まれる」

のであって、

・「個の設定」

が、そのまま〈ドラマ〉にはならない。

そのあたりが「小説と映画・ドラマの違い」である。

倉本脚本家は、「ナレーション・心の声」を多用するが、「その技法」は説明であって、表現ではない。小説では許されるが、ドラマでは「逃げの技法」である。


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〈ドラマ〉は、「人と人」の間に発生する。

したがって、「壁・檻・枷」は、「人 対 制度」「物語の設定」なので、〈5味〉としてカウントされない。

キングコングは「擬人化された怪物」だから〈ドラマ〉。

だが、ゴジラは「擬人化されない」つまり、自然災害と同じ。〈ドラマではない〉。


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ハイパーOZ理論を構想する前に、

・「最近のドラマには、アンタゴニスト(人間関係の対立)が足りない」というTBS演出家・鴨下信一氏の言葉

・アリストテレスのミメーシス理論(模倣・再現)

をもとにしてつくりあげた「映画・ドラマ」の評価シートである。

T論_04.jpg

 
T-メソッドの欠点・限界は、

・(現実の)日本民族の特質「忖度・対立回避」を反映した「(映画・ドラマの)キャラクターたち」

を否定できないから。

〈アンタゴニスト(人間関係の対立)〉を最重要項目とした評価基準は(少なくとも日本において)成立しない。

※ 「恨」の文化がある半島系。「神々の怨憎」を神話に持つ西洋なら、アンタゴニストが最重要項目にした評価基準が成立する)

日本芸術の最重要規範は「もののあわれ」。無常である。


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(資料、以上)


ハイパーOZ理論は、小津安二郎監督への「敬意」と、「The Wizard of OZ」の理想郷:OZから命名されている。


posted by sponta at 13:35| 東京 🌁| Comment(0) | OZ評価 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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