2007年07月11日

日本社会の問題は、「個の耐性の欠如」である。

日本社会の問題をモラルの低下と言う人がいる。
だが、それは、時代の変化によって社会規範(モラル)が変化しているためであって、そのような不平を言うひとは、旧来の規範に捉われているだけのことである。

戦後、占領したアメリカが移植した「平等の理想」のもとに、社会のヒエラルキルな構造は崩壊していく。
その結果、社会行動におけるモラルの重要度が低下するのは当然のことだ。

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フラットなコミュニティーの中では、すべての個の行動は摩擦を呼ぶ。
だから、個の発信はヒエラルキルなコミュニティーでの場合よりも、慎重にならざるをえない。

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ヒエラルキルなコミュニティーで、部長や社長は言いたいことを言えるが、平社員はそうではない。

平社員同士なら言いたいことを言えるかといえば、フラットな関係なので、お互いへの遠慮・配慮・摩擦への危惧があり、言いたいことは言えぬ。

平社員同士が言いたいことを言えるのは、社長や部長の悪口であり、それはフラットな関係においてなされるのではなく、ヒエラルキーなコミュニティーでの発言である。

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ヒエラルキルな関係よりもフラットな関係の方が、個は発信力を失い、結果として、個と個の間のコミュニケーションが希薄になっていることに、私たちは気づかなければならぬ。


同僚や同級生の関係よりも、先生と生徒。先輩・後輩。親方・弟子の方が、互いの存在に縛られる度合いは強い。

それは、強制力をともなっているから、必ずしもお互いを思いやるというものではないのかもしれぬ。だが、すくなくとも、コミュニケーションの度合いは、強い。
さまざまなヒエラルキルな関係がコミュニティーの基盤にあり、それが結果として、現在よりも濃密なコミュニケーションを実現していたと感じている。

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新入社員の定着率の低下に悩んだ企業が、新入社員ごとに相談に乗る先輩社員をつけることで、問題解決を図っている。と聞く。

これなども、フラットなコミュニティーの弊害であるディスコミュニケーションを、クラスターな構成要素を盛り込むことで解消していこうという企みである。
そして、そのクラスターにヒエラルキルな人間関係を盛り込んだことが画期的である。

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若者たちの言葉遣いの粗放さを非難する人達がいる。

だが、これも、彼らが自己韜晦(自らを隠すこと)と、コミュニケーションでの摩擦を回避するためにやっていることで、それが時代の変遷とともに微調整されていくことは必然である。

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江戸時代の遊郭では里言葉というのが、使われたという。

これは、訛りが、客の感興を下げることを防ぐためであった。
もちろん、地方出身であるという出自を隠すためでもある。

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柳原可奈子氏が、渋谷の109のショップ店員の真似をしている。総武線のギャル語の真似をしている。
真似された人達を、日本語の乱れとして批判する人もいるだろう。

だが、そういう新しい日本語たちも、ショップ店員という職制のもと、本来の出自を隠すことに効果をしめしている。
そして、ギャル語を使う少女たちも、自らの特異性を誇示することで、自分の内面に踏み込まれたくないという明確な意志を発信している。
ギャル語を使う少女たちは、言葉使いを批判されることで、彼女の本質を批判されることを回避している。そういう若い人達の微妙な心の動きを見逃してはならぬ。

ヒエラルキルなコミュニティー構造に属する体育会系の若者たちに比べれば、フラットなコミュニティーに存在するショップ店員も、ギャルたちの孤独感は強い。

その孤独感を埋めるために新しい日本語が増殖されているのである。

*

先日、「笑っていいとも」に柳原嬢が出演した。

かつて、寺山修司の形態模写で一世を風靡したタモリ氏との邂逅は画期的なできごとである。

私は、その番組を見ながら、寺山修司の孤独と、109のショップ店員・総武線のギャルの孤独を重ね合わせていた。

寺山修司も、ショップ店員も、ギャルも、身動きのとれぬ人生を歩んでいる。

御意見無用とでもいうような…。



教育評論家が、「朝まで生テレビ」で、語っていたことを印象的に憶えている。

かつて受験戦争があった。

当時の教師は、生徒たちの学力を問題にしていた。そのとき、生徒たちは、学力を問題にされるだけで、生徒たちの個の内面に侵犯することはなかった。だから、生徒たちは、受験戦争という困難と立ち向かいながらも、精神的に暴発することはなかった。

だが、受験戦争批判が起きると、教師たちは生徒たちの学力でなく、個の内面に侵犯するようになる。
そのようになると、生徒たちは反発し、学校でさまざまな問題が頻発したのである。

高石ともやの「受験生ブルース」の明るさと、尾崎豊の「卒業」の深刻さを比べてみればいい。

そして、2007年。
尾崎豊の深刻さも虚無化している。

2ちゃんねるには、バイクは盗まず、バイトをして買え。如何なる不満があろうとも、校舎のガラスを割っちゃいけないよ。
そもそも、社会や権威なんてものは妄想でしかないし、もし、それが存在するとしても、それに寄り添うことは妥協ではない。
そして、それに反発・抵抗することで、英雄になれることなどない…。との指摘が横溢する。



教室であろうと、総武線の車内であろうと、109のショップであろうと、個は、コミュニケーションにおける心の負担・負荷と戦いながら生きている。

それは、ブロガーも同じである。

*

事実の立証など不可能だというのに、誹謗中傷という言葉が巷間乱れ飛んでいる。
そして、ネガティブコメントがブログにコメントされることを厭うブロガーが頻出している。
その一方で、モラル規範を求めようとするアルファな人達もいる。

だが、それこそ、個の耐性のなさを印象付ける現象である。

ネガティブコメントで過度に感情を動かす必要もないし、モラルで発信を制限する必要もない。

ただひとつ問題があるとするならば、コメントのインテグレート(統合・総合・要約・対照)システムの不在である。

*

子沢山で有名なタレントの土田氏は、
「芸能人である私は、ネットにあることないことを書かれ、批判・罵倒されていることを見せることで、こどもたちに教えることができるが、そうでない一般の人達には難しいでしょうね…」と、番組で告白していた。

彼はテレビで活動する芸人である。だから、ネットにあることないことを書いた人達は、彼の客である。

ならば、土田氏が、誹謗中傷した人達たちを訴えることはないし、誹謗中傷を辞めろと悲鳴をあげること、声高に叫ぶこともないだろう。

土田氏が言いたかったことは、「個の耐性をあげること」。ではないか…。

きっと、土田氏は、そのことを発していたのかもしれぬ。
だが、誹謗中傷が多出するインターネットを批判してきたテレビの分脈から乖離するものだから編集でカットされたに違いない。

*

そして、昭和34年生まれの私が、戦後を語る資格があるかは分からぬが、戦後日本の最大の問題は、「個の耐性が落ちた」。それに尽きると感じている。

個の耐性が落ちたことの結果起きることは、「逆切れ」と「ひきこもり」である。

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「逆切れ」と「ひきこもり」の原因は、ふたつ。

1. フラットなコミュニティーによる、個のコミュニケーション負荷の増大。

2. こどもたちの耐性を育まない母子関係・教育現場にある。


私は、娘の耐性を育むために柔道に通わせた。

そして、コミュニケーション力に寄与するために、音楽を習わせた。

それとて、彼女に耐性が養われているのではない。
娘が頑として、作文に取り組もうとしないのは、彼女の中で、発信に対する耐性が出来ていないことの表れだと思っている。

なにせ、私と一緒に生活をしている女性だ。
発信によって、何が起こるかを熟知しているに違いない。

妻は、そんな彼女を歯がゆく思っているようだが、私はそうは思わない。

軽はずみに発信して、炎上し、傷つき、ひきこもるくらいよりも、まし。
そう、思っている。

生きている限り、人間の発信への欲望はつきない。
まさに、前園さんならぬ、「湯川さんの言う通り」なのだ。

と、彼女のキャノン大賞を受賞した作品を載せておく。

私は、自分の影をつかったらと、アドバイスしただけ…。
自分の影でブイサインをした彼女にクリエイティブパッションがないはずはない。

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posted by スポンタ at 06:58| 東京 ☔| Comment(1) | TrackBack(3) | ネットウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても新鮮で明快な論点でした。
100万部応援しています!
Posted by horadoriya at 2007年07月11日 22:32
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