2020年02月22日

「麒麟がくる」第五回の批判。

原作・脚本の池端俊策先生のクラスの生徒だった私。

池端俊策はタツノコプロダクションで「みなしごハッチ」のシナリオを書いた。子供向けのアニメ・童話とはいえ、スズメバチに仲間・家族が皆殺しにされたり、壮絶・陰惨な話だった。

このテレビ番組をめぐって、兄弟喧嘩が発生し死亡事故が起きたことは、作品とは無関係とはいえないだろう。

この作品で先生の作品を批判しているが、過去の作品は賞賛している。

題名は忘れたが、主演の八千草薫は、荒川の橋を挟んでこちら側に住んでいる。彼女には出奔した夫がいて、橋の向こう側の愛人(五月みどり)のところで死ぬ。「夫が死んだこと」を知った八千草は「象みたいに、知らないこところで死ねばいいのに」と、死んでからの騒動を嫌悪したセリフを覚えている。

別のドラマだが、父親が自殺した兄弟の確執。父が無理心中を進めたとき、「抗った弟」「従った兄」。弟は「従った兄」を恨んでいたが、兄は「あの時、一緒に死ぬ」は言ってあげれば、父は「死ぬことを諦める」と思っていた。「こどもに反対された絶望」が父親の命を奪ったと、弟を責める。

過去形になってしまうのが残念だが、「池端先生は優秀なシナリオライター」だった。

その原因を憶測するなら、

NHKの大河ドラマのプロデューサー・編成の人たちの「かつて倉本聰氏を北海道に追放した」伝統が今も生きている。

倉本氏はノイローゼになり、北海道に出奔したが、心優しい池端先生は、「台本直し」を受け入れたのだろう。

先生は、鶴橋康夫氏・フランキー堺氏を「ホン(脚本)が読める」と学校で語っていたのを覚えている。

だが、「権力を持った」NHKの方々は、そうではなかったのだろう。


私はTBSのアニメ「まんがはじめて物語」で首藤剛志氏と付き合いがあった。

シリーズが終わって10年ほどたった時、記念番組の企画があり、久々にシリーズ構成の首藤氏がシナリオを書くことになった。

単発の企画ということで、駆け出しのテレビ局員の女の子が担当になった。

開明なTBSらしいやり方だと思うが、アニメ専門誌で連載小説を掲載していたのは宮崎駿氏と首藤氏のふたりだけ。第一回アニメ大賞を日本武道館で受賞したことをしらぬ若手テレビ局員は、首藤氏の経歴も知らずに「言いたい放題」。

出来上がったシナリオは最悪だった。

パワーポイントでは「1ページで提示する訴求内容は5項目まで」とかの鉄則があったが、シナリオも同じ。情報が多いと、シナリオは散漫になる。「シナリオが分かっていない」テレビ局員は、「情報を増やすこと」をシナリオに求め、作品は散漫になった。

それも、これも。あれも、それも、

・「シナリオの評価基準」が定義されていないから。

とはいえ、当該テレビ局員は、被害者である。シナリオ学校でも、映画の学校でも定義されていないのだから、仕方がない。

芸術作品に対する「神秘主義」で、「評価基準は定義してはならぬ」。

・鑑賞者の「独立した感性」こそが大切。

と、義務教育の時代から「洗脳されている」から、素直に感じたことを「言いたい放題」になる。

・エリート大学を卒業して、(運・縁があって)一流企業(放送局)に就職できた人たちは、「シナリオ」はもちろん、「映画」も勉強していない。

つか、我が娘が在京キー局(日本テレビ・テレビ朝日・TBS)のインターンに合格しながら、就職できなかったのは、「コネ入社」が横行していることとともに、現場が「すでに知っている人たちを嫌う」からである。


結果、

・池端先生や、首藤剛志氏のような「大家・大御所」であっても、「素人のテレビ局員」に台本直しを食らう。




・視聴率が低迷している。

・視聴率が右肩下がり。

なのは、私の論評が正しいことを証明してくれているので、慶賀である。

つーことで、「麒麟がくる」の第五回を分析する。


首藤氏は「お前は何故、Yes,But...で言わない」と私を叱った。

娘は「お父さん。Yes, Butはダメ。Yes and...だよ」と教えてくれた。

だが、「伊平次を探せ」なる第五回。
良いところが見つからない。
(-_-;)


第5回の疵(きず)は、ご都合主義の展開。

鉄砲鍛冶の伊平次を探しに行ったら、堺に行けとなり、堺に行ったら、伊平次が「幼馴染」と知る。


シナリオ界の大御所・新藤兼人氏は、溝口健二監督から、

・これはシナリオではありません。ストーリーです。

と自作のシナリオを突っ返された。

この意味は、

・シナリオとは、登場人物の「対立」のドラマ。

一方のストーリーとは、

・あらすじ。出来事を連ねたもの。

放送大学・美術芸術学の青山昌文教授は、テキスト芸術を「叙事詩的」と「抒情詩的」に分ける。この分類は、

・歴史は、出来事が記述されているだけで、ドラマではない。

と暗示している。


小津安二郎監督の遺言は、

・映画はアクシデントではない。ドラマだ。

と言い残し、
TBS演出家・鴨下信一は、

・最近のドラマにはアンタゴニスト(対立関係)が足りない。

と、本来のドラマのあるべき姿を指摘している。

映画「跳んで埼玉」が面白いのも、「帝一の国」が面白いのも、「対立関係(跳んで埼玉では、東京都民と埼玉・千葉。帝一の国でも学園内が真っ二つになって対立している)」が明確だから。


第5回の物語の展開は、まるで「ネズミの嫁入り」。

・主人公が、さまざまなところに出向き、話を聞く。

ただそれだけ。

主人公と他のキャラクターたちの対立・摩擦はない。

せいぜいが京都市中で「決闘しそうになる」場面。だが、別キャラの登場で「決闘は回避」。ドラマにならぬ。
つか、一過性のキャラ(別キャラの配下)と決闘しても、ドラマは散漫になるだけ。

17世紀フランス古典演劇理論では、内的整合性が重要と説く。

・内的整合性とは、登場人物の「思想と行動」の整合性。

つまり、シナリオは観客に、(まず、)登場人物の思想を「実感させなければならない」。(そして、)道場人物を行動させる。

テレビドラマ「同期のサクラ」では、各回で必ず、主人公(高畑充希)は「私には夢があります」と宣言する。それは17世紀フランス古典演劇理論を満たしている。

「太閤記」なら、「俺は天下を取るんじゃ」と秀吉に言わせる。「忠臣蔵」なら、「殿の無念をお晴らし申し上げます」との決意を語らせる。でないと、ドラマにならない。

明智光秀の場合は、「どうなのか?」それを無名時代の物語を通じて表現すべきなのに、「麒麟がくる」では、その片鱗もない。


戦国時代を成立させたのは「下剋上」である。

下剋上を成立したのは「土地に縛られなくなったから」。つまりは「貨幣経済の浸透」。土地に縛られていたら「主君に反抗する手立てを下級武士は持てない」。だが、「貨幣経済」で武力を養えば、遠くにいる「支配者」に対抗できる。

その成功者が斎藤道三であり、楽市楽座を作った、賽銭箱を作った織田信長である。

貨幣経済は「国際経済によって蹂躙される」。金と銀の交換レートの違いにより、日本の銀が海外に流れた。
それを払拭するために、徳川家康は「米本位制」を江戸幕府で始める。

つまり、稲作が始まって以来の「封建社会」が、戦国時代に「自由経済」によって破られ、その修正を徳川家康が行ったのであって、その変化の中で、主人公・明智光秀を描くべきであった。

だが、「麒麟がくる」はそのような配慮は皆無である。

第5回は、「鉄砲の重要さ」に目覚めた道三と光秀というストーリーだが、それが、「農民=兵士」つまりは、封建社会を、鉄砲が「お金=戦力」という「経済重視の社会」へ画期的に変革させる。という時代の変化を感じさせない。

・鉄砲の構造を知りたい。

が、第五回の主人公の動機である。

だが、そんなことは「鉄砲隊を重層にして、連射すればいい」だけのこと。問題は「構造」ではなく、「大量生産」である。
歴史はそのことが分かっていて、銃身の底部のネジを「共通化」すること。金属部分・木製部分を分業することで「大量生産」を可能にした。

・主人公は、「鉄砲の構造」を知るため。

に伊平次を探すのではなく、

・「鉄砲の大量生産」を実現するため、

伊平次を探すべきであった。


鉄砲の「大量生産」を実現した国友村が、近江商人の拠点・琵琶湖畔にあるのは示唆的である。

火薬の原料で栄えたのが五箇山の合掌造りの村々。財力がなければ、あのような民家は建たぬ。五箇山は富山だが、岐阜の山奥ともいえる。

明智光秀を描くにおいて、鉄砲を使うなら、五箇山の合掌造りを物語に加えぬのは「もったいない」。

ウィンチェスター銃の当家の屋敷は、ホーンテッドマンションのようだという。つまりは、「銃によって惨劇された人たち」の霊がまとわりついている。五箇山が「火薬の生産地」であったことが巷間流布していない。地方自治体が(あまり)公にしないのも、同様な理由だろう。


歴史とは関係ないオリジナル・キャラクターは、

・医師(堺雅人)
・医師のお付きの女の子(お駒)
・漂泊の男(ナイナイ岡村)

だが、彼らは「狂言回し」な役割を果たすだけで、主人公との「対立関係はない」。これではドラマは盛り上がらないし、「予定調和な展開」になる。


さらにいうと、明智光秀が「武芸の達人」という設定も首を傾げる。

一騎打ちに勝つような歴史的事実があるのだろうか。もし、そうでないなら、「安直な設定」といえる。




posted by sponta at 08:20| 東京 ☔| Comment(0) | ドラマ・映画・演技 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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