2018年06月19日

ドラマ。批評の前に分類を・・・。


「阿修羅のごとく」の第二シリーズを観た。

「あ・うん」と並ぶ、向田邦子の最高傑作。当時、賞を総なめにしたし、絶賛された。勿論、私も何度か観たし、感動した。
そして、向田邦子のようなシナリオを書くこと。書けることが、目標になった。

だが、私は、向田邦子のような「中産階級(一流会社のサラリーマン)の育ち」ではないし、女性の感性を持ち合わせていない。
ならば、「自分の出自に有ったシナリオを書くべき」。そのように諦観した。


それから、40年近くが経って「気がつく」のは、向田作品が「特異なジャンル」に属すること。
評価の前には、分類が不可欠。


・ディオニュソス的ではなく、アポロン的。

※ ディオニュソス的とは、鑑賞者の感情を揺さぶることを目指す作品。

※ アポロン的とは、この世界の本質・存在を表現するための作品。

・叙情詩的ではなく、叙事詩的。

※ 叙情詩は、直接表現。登場人物の感情によって、物語が進行する。

※ 叙事詩は、語り部による間接表現。事実が淡々と進行する。

ちなみに、朗読は間接表現。演劇は直接表現である。

※ 叙情詩的作品では、観客は「主人公に、感情移入すること」が作品の正否に関わる。一方、叙事詩的作品では、そのような必要はない。
歴史(叙事詩)は、登場人物が多くても問題はないが、「感情移入」が重要なドラマ(叙情詩)はそうはいかない。


向田作品は特例であって、娯楽作品の仕事をこなした後に、ようやくアポロン的な作品を世に問うことが許された。

新人がシナリオライターを目指すなら、「向田邦子」を目指してはいけない。

職業作家として有能だった、鎌田敏夫、ジェームス三木、並木ひろし・・・のシナリオライターは忘れ去られている。CATVの再放送枠で特集が組まれることない。
「男女7人・・・」「青春の・・・」シリーズ、「赤い・・・」シリーズ、石立鉄夫主演シリーズで再放送されることはあっても、シナリオライターで特集が組まれることはない。


いままで、ホームドラマ、探偵もの、時代劇、歴史劇という分類があった。
だが、それだけでは、ドラマの本質をとらえていない。


同じホームドラマであっても、素朴派の小津安二郎もいれば、ドラマ的構成を好む木下恵介もいる。

ディオニュソス or アポロン
叙情詩的 or 叙事詩的

という分類は重要である。


腐ったリンゴを食べ続ける趣味はないので、山田洋次作品を私は観ない。
先日も、「家族はつらいよ」の終わり15分ほどを観たが、苦笑する。伴奏音楽が、「阿修羅のごとく」に似ている。
山田監督は、向田邦子のホームドラマに劣等感を持っているのかもしれぬ。


ウェブでは、山田監督のことを「左翼者」として唾棄する。

左翼思想の本質は、「社会を階層として捉える」こと。結果、山田監督の場合、「貧乏はドラマ」となる。
だが、「貧富の差」で世の中を二分することは、「(左翼が)革命を起こす」ためには必要だが、人間の本質ではない。
クレジットカードのコマーシャルではないが、人生の機微は「プライスレス」なところにある。


東大を出たから、松竹に入社できたし、気のきく助監督でなかった彼が、天才的コメディアンと邂逅し、「男はつらいよ」という人気シリーズを打ち立てた。
だが、それは山田監督の「めぐまれた人生」を表現しているだけである。

そのことを「家族はつらいよ」の最後の15分の「説明セリフ」の多さから、spontaは追認した。


悪口ついでに指摘するなら、山田洋次氏は、オードリー・ヘップバーンの出世作「ローマの休日」のすばらしさは「語り口」と指摘していた。
ローマの名所で、アイスクリームを食べたり、真実の口に手をつっこんだり、ペスパに二人乗りをしたり・・・。


だが、私が指摘る「ローマの休日」が素晴らしいところは、冒頭のシーンで、「世間から羨ましがられる立場の王女」が、「自分の立場を投げ出したい」という強い気持ちを持っているところ。---それが、この作品のオリジナル性。

主人公の「強い動機」がストーリーを展開させていく。この太い柱があってこそ、「ローマの名所での語り口」が魅力的に映る。
「駆け落ち」など、恋愛のためにすべてを失う女子は珍しくない。だが、この作品のヒロインは、「1日の恋愛」で成長し、王女としての責任感に目覚める。そこが気高く・素晴らしい。

−−−山田監督の指摘は浅薄である。
posted by sponta at 00:00| 東京 ☔| Comment(0) | ドラマ・映画・演技 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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