2017年09月18日

プロに憧れる吹奏楽部の若者たちに。

全国の吹奏楽部で楽器をやっていて、プロを目指している人・音大受験を控えている人に、公開メール。

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管楽器奏者は、山田和樹氏の言葉に従ってはならぬ。


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東京芸大を卒業し、ブザンソン国際指揮コンクールで優勝した人が、民間放送唯一のクラッシック音楽番組「題名のない音楽会」で発言すれば、全国の中高生は信じてしまう。

だが、山田氏の「インテンポはすべての音楽に存在しない」という発言は間違っている。


山田氏の理論が間違っているのは、「月刊ピアノ」の付録CDのピアノ演奏を聴けば分かる。というか、〈タイム感〉のないあのCDの演奏を聴いて興ざめしない人は、私の理論を理解できない。

私の形容では、テンポルバートとは「糸の切れた凧」である。
テンポルバートが成立するのは、ソロ、またはデュオ。指揮者のみ。
したがって、一般の楽器奏者は、クロノス時間とカイロス時間という二つの時間感覚を独立して持つことを目指さなければならない。
さらにいうと、これができなければ、プロになることをあきらめるべきだと、私は断言したい。

ドラムセットで、脚・手が独立したリズムを叩けるか・・・。
それで、自分に〈タイム感〉の素養が分かるはず。早期に自分の才能を確認できていれば、人生を無駄にすることはない。
○○

山田氏の言葉を信じて、テンボルバートな演奏をすれば、アンサンブルする友人たちから嫌われ、音大受験では「独りよがりの演奏」と不合格になる。



この発言の背景には、「指揮者は、グルーヴに関与できない」という事情がある。

さらに、明治以降の日本の音楽界は〈タイム感〉という感覚を見過ごしてきた。〈タイム感〉とは、音だしとは別に、メトロノーム感覚を持つこと。

状況が複雑なのは、本場西洋においても〈タイム感〉が暗黙知になっていること。だから本場でも、〈タイム感〉のない人がコンクールで優勝することが珍しくない。
〈タイム感〉のない小沢征爾氏は「世界のオザワ」になったし、佐渡裕氏をレナード・バーンスタインは評価した。
一流かどうかの評価基準には〈タイム感〉がないが、超一流かどうかの評価基準には〈タイム感〉がある。
その意味で、ショタコン系若手ピアニストの牛田君に未来はない。



山田氏は「テンポルバートの量(テンポのずれ)」を適量にすることで、エモーショナルな演奏を目指しているのだろう。
しかし、これこそが勘違い。間違っている。

「音だしのタイミング(主観的な時間・カイロス時間)」と「クロノス時間(物理的な時間・一定のテンポ)」を独立させ、それを自由に操ることでエモーショナルな演奏を実現すべき。


ピアニストのグレン・グールドは、それを実現している。
彼の演奏を聞いてみれば、一人で演奏しているのに、連弾のように聞こえる。一つのクロノス時間と右手と左手のふたつのカイロス時間が感じられるはずだ。



指揮者を目指す人なら、「インテンポはすべての音楽に存在しない」でもよい。

しかし、管楽器奏者たちが、「インテンポはすべての音楽に存在しない」とばかりに、それぞれにテンポルバートな演奏をしたら、収拾はつかない。指揮者が必要になる。

アンサンブルは、「お互いの音」で「合わせる」のではなく、「パルスを共有・シンクロさせる」ことによって、成立する。




かなり前の話になるが、平原彩香嬢が「熊蜂の飛行」のスキャットをやっていて、大学時代にお世話になった弦楽奏者とデュエットをしていたが、〈タイム〉ではなく、音で合わせようとしていたから、悲惨な演奏になっていた。

インターネットで探せば、たぶんあると思う。
父親の平原サックス奏者は〈タイム感〉があるのに、娘にはない。

その理由は、管楽器奏者でも、音楽的な素養を身につけるためにピアノを練習することは普通だが、ドラムを練習することは稀だから。

〈クロノス時間〉と独立して自由な〈カイロス時間〉を操るためには、ドラムセットの練習が効果的である。



16ビートで、4拍目の裏の裏を2つに刻む場合、「印象的・効果的にしたい」からといって、「テンポより長め」に叩いてよいのだろうか。
そんなことをしたら、演奏は台無し。というより、他のパートが演奏できない。

1小節の中の拍の長さは均等でなければならぬ。




重要なことは〈タイム感〉。つまり、共演者が「パルスを共有している」こと。堅調な〈タイム感〉の上で、自由に演奏するのが好ましい。



アイドルグループ乃木坂の生田嬢は、おじの音楽プロデューサー・佐久間氏の最後の録音でピアノ演奏を収録しているが、ミュージシャンから「ソリッドだね」との形容を得た。

私はその意味をはかりかねていたが、きっと「〈タイム感〉があるね」だろう。



山田和樹氏エゴサーチされるとは思わないが、氏の周辺の方がこの記事に出会ったなら、是非ともコメントをいただきたいと思う。
なぜなら、〈タイム感〉を音楽学生たちの共通認識にしなければ、日本の音楽界は、世界的に低いレベルのままだから。



明治期は、日本の伝統的な音階(4・7抜き)のため、ファとシの音程がとれなかった。

〈タイム感〉は日本人にとっても難しいが、西洋人にとっても難しい。だが、〈タイム感〉をマスターするなら、日本の音楽界は、世界トップクラスに躍進できる。

山田氏が「インテンポ」に言及した今がチャンス。「題名のない音楽会」は、そのキッカケになりうる。
スポンサーの出光興産は、出光賞をやっているばかりではダメだ。せっかくの番組をもっと有効に使うべきである。



追記:
〈タイム感〉のあるなしで、現状の音楽家たちを精査すれば、音楽シーンは様変わりするだろう。
とはいえ、既存のビッグネーム(小沢征爾氏ほか)が色あせるからといって、音楽家たちは利害にまみれてはいけない。弟子たちの将来のために、自らを肥やしにすべきである。

今回、山田氏に私が反旗を翻したのは「彼が芸術家であり、教育者だから」。彼に対して「芸術家としての尊敬」があるからこその提議である。
けっして「営業妨害」ではない。
posted by スポンタ at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 公開メール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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