2015年12月11日

「荒木飛呂彦氏の漫画術」を

図書館で予約しているが、まだ読めていない。

そこで、一緒に予約した「超偏愛! 映画の掟」が先に読めることになったが、なんとも納得しない。

著者が「面白さ」の源泉とするのは、1.謎、2.感情移入 3.設定描写 4.ファンタジー性、そして、5.泣けるか…。

彼が執筆する漫画ではそうなのだろうが、一般的な妥当性があるとは思えない。

たとえば、「謎」が第一とするなら、「刑事コロンボ」のファーストシーンで犯人が誰か分かってしまうストーリーに価値はない。
次に、感情移入とあるが、「羊たちの沈黙」の異常性格の博士に、観客は感情移入するのだろうか。

わが師・首藤剛志は、何よりも「設定」を嫌った。「設定」は最小限にしなければならない、説明と同じ「作品を駄作にさせる」要素のひとつである。


◇     ◇     ◇

さて、漫画術はどうなのかと、アマゾンの書評を閲覧し、その感想をまとめてみる。

◇     ◇     ◇

AMAZONのコメントに

「きわめて具体的に書かれてあるのが特徴である。マジシャンが手のうちの明かすようなことも含まれるが、それでもあえて伝えたいという思いがあったそうだ。「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」の基本4大構造を、「絵」という最強のツールで統括し、セリフという「言葉」で補う。特に、キャラクターは重要で、著者はキャラクターをつくるときには絵にする前に必ず身上調査書を作っているのだという。」とある。


…このテーゼの立て方が、間違っている。
…構造を提示しているだけで、「何も語っていない」。それは、ドラッカーの著作「マネジメント」を、スローンが「大切なことが何も書かれていない」と唾棄したのと同弊である。
…マネジメントの定義など、どうでもよく、実務家には、どうマネジメントするか。それだけが重要なのである。

…分かりやすくいえば、美味しいラーメンの要素は、「麺、スープ、具」であるというような、分かりきったこと。(定義)

…あるべきは、「コシのある麺」・「出汁の効いたスープ」・「麺とスープを引き立てる具」というようなテーゼの立て方をすべきであって、「自立的な表現」を目指すべきである。(目標)

…因みに、私が考えるドラマの「面白さ」の3大要点は、「主人公が掲げる超目標の魅力(志)」・「主人公の主体性・自立性(葛藤・アンビバレンツ)」・「人物配置&環境における対立構造(アンタゴニスト)である。

…キャラクターが魅力的であるのは当然のことだし、ストーリーが魅力的であるのは当然のこと。それをあえて言うのはナンセンスである。
…世界観は環境のことなら副次的な要素だし、テーマも「主題」ではドラマにはならない。つまり「愛」では漠然としていて、恒真命題でありテーマにならないが、「愛のために命を捨てることは許されるのか」ならば矛盾命題であり、テーマ・争点になる。そもそもドラマとは、弁証法の一種であり、二元論的な提示。したがって、「情熱」を描くためには、「情熱」は挫折させなければならない。

*

AMAZONのコメントで

「目から鱗だったのは、キャラクタで一番大事なのは、性格ではなく、動機である、としている点です。なるほど。つまり、「あくの強い、強欲な男」
という性格のことよりも、「他人を押しのけ、踏み潰してでも、出世しようとしている男」といった、動機、行動原理が、キャラクタとして大事だということなのでしょう。」とあるが、


…性格と動機は別物ではありません。
…キャラクターの行動における「(数々の)動機」の集積物を、他者は「(そのキャラクターの)性格として形容する。ということです。
…つまり、「性格は、状態」であり、「動機は、進行形」。それだけのことです。
…マンガに限らず、映画、小説の表現において、「過去形」・「状態」で表現するのではなく、「現在進行形」で表現することが理想とされるのは当然のことです。

*

AMAZONのコメントで

「本の前半では「1ページ目で読者の気を引くべし」、「キャラづくりは履歴書作り」と書かれており、このあたりまでは全ての創作物で共通することだと書かれていました」とある…。


…しかし、履歴書を念密に作ることは、「作者のアイデアを引き出すための手法」であって、アイデアそのものではない。
…アクターズ・スチューディオのリー・ストラスバーグのメソード演技も、同様の技法だが、俳優を神経衰弱に陥らせるだけで、そのせいでマリリン・モンローは自殺したともいえる。
…効率的なのは、「ドラマとは対立である」「対立を魅力するためには、キャラクターが確かなこと」。つまり、履歴書を詳細に書くことによって、キャラクターの設定が散漫になることが危惧される。生きている人間は散漫なものであり、キャラクターは散漫であってはならぬ。

*

そして、こんな評も、

「あらゆる場面でとても参考になるけれど、明らかな間違いもあります。
特に「主人公が捕まってはいけない」などという部分にはずっこけました。荒木さんには悪いけれど、現存する「面白い映画ベストテン」には必ず入ると思われる黒澤明「用心棒」は、三十郎が相手に策謀を見ぬかれて、捕まってしまうからです。
小池一夫氏は「主人公には弱点がなければならない」と言ってますが、三十郎の場合、「強いものには強いが弱いものには弱い」というのがそれです。弱者を見ると、不利になるとわかっているのに、助けないではおれない。そのために捕まってしまうわけ。
つまり、観客の共感を呼ぶ正義感、人情が、そのまま主人公の弱点となっているわけで、こういう点、「曲者」主人公好きの荒木さんにしては、目配りが足りない、と思いました。
それで星ひとつマイナス(^_^;)」


…著者の目配りとは、こんなレベルなのであり、自作においては妥当性があったとしても、それがマンガ全般・表現全般において妥当性があるとは限らないのである。



数学と音楽に詳しい古い同僚に進められた本であり、メディア関係者も褒めているというが、はてさて…。
と、考えてしまった。

さまざまな意味で、図書館で借りて読むべきだろう。そう思った。

posted by スポンタ at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | ネットウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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