2009年05月10日

譜面を越えて…。中学生ジャズバンド。

H氏の中学生ジャズバンドに娘が通っている。
娘はパーカッションである。最近はリズムセクションで練習をするという。



昨日の練習でベースの先生は中学生たちに、「リズムセクションがやるべきことは、他のパートが次のフレーズが入りやすいようにお膳立てをしてあげること」と、語ったという。

周りの中学生たちは、「そうなんだ」と驚いていたようだが、我が娘は、「そんなこと分かっているけど、できないのよ」だったらしい…。

「ジャズとは対話」。そう娘に伝えてあったが、その実際はそういこと。



そこで私が解説する。

音楽の表現は煎じ詰めれば、
音色
音程
リズムだ。

だから、拍(パルス・ビート)を崩さなくても、「曲が変わる感じを表現することはできる。

と。

*

イントロがあり、テーマのテュッティー(全員奏)があり、つづいて、ソロが何人か続く。そして、テュッティーに戻る。

*

ソロの次にテーマのテュッティーに続くとすれば、
ドラムは最後の2小節ぐらいはdec.して、最後の2泊に、オカズをぴりりとfぐらいで入れて、テュッティのffに導く。

逆に、ソロ同士で繋がる場合は、ソロの最後の2小節をcres.して盛り上げてもいい。

考え方を変えれば、テュッティーの前のオカズはfffぐらいにしてもいい。エリントン楽団のドラマーはそんなプレイをしていたっけ。


要は、soloとの対話の中で決まってくる。
solo, soli, tutti それぞれの演奏をドラムのニュアンスが導き出す。



指揮者のダイナミズム(強弱)の指示よりも、ドラムのダイナミズムの方が全体のダイナミズムを決定する。

ベース講師は実際にプレイに参加。ビッグバンド全体のダイナミズムを豊かにさせてみせた。

彼は指揮することで、中学生たちの演奏に君臨しない。これがジャズの本質。

*

だが、中学生が譜面を追うことにイッパイイッパイになっていると、そういうダイナミズムの調整ができない。

dec.すると「モタル」危険があり、cres.すると「走る」危険が広がる…。だから、ドラムを習熟していないと、テンポキープに終始してしまい、そこから「スウィング(パート同士の対話)」は生まれない。

分かっているんだけど、できないんだよね。と娘。入所式の演奏を聴いて不満足だった彼女が、今その演奏の中にいる。

講師たちは、こどもたちに君臨せず、ジャズを目指している。素晴らしい指導だ。



では、どうすればいいのか。といえば、単調なエチュードを何時間も繰り返すこと。

そう、娘に説諭した。




だ、だがである…。

夜、娘と私の先輩が焼いてくれたポンタ村上氏のビデオを観る。

リットーミュージックの制作で、ドラム演奏者に向けて、ドラム上達法を解説するビデオ。1995年ごろの作品…。



これは、そのPART-1

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すると、ポンタ氏が、中学生ジャズバンドの校長・H氏の言葉を引用する。(パート2)

彼とよく飲み歩いた。バカ話ばかりをしていたが、唯一彼が良いことを言ったのを覚えている。
「練習したって、演奏なんてうまくならない」。「演奏が上手くなるには、他のことをしなきゃ」。


勿論、死ぬほど練習した彼のダンディズムで、そう語っているのかもしれぬ。だが、音楽とはそういうものかもしれぬ。

あるレベルを超えると、音楽は技術ではなく、人生となる。

*

そういえば、昔、一緒に仕事をしていたことがある深町純氏も、「私は練習をしない」と言っていた。

さらに、昨年、仕事で一緒になった若いギタリストは、「スケール練習をすると妙な癖がつくので、練習はしない」と。

そういうものかもしれない。



私たちがやってきた音楽の方法、修行のあり方も変化してきている。

なまじ譜面があるから、譜面に縛られる。几帳面な日本人はそんな練習方法が踏襲されてきたが、譜面による練習など要らないのかも…。

因みに、落語の修行は、筆授ではなく口伝である。三回やって伝える。それだけだというし…。

*

譜面など、段取りに過ぎぬ…。

音楽とは、自由に個性を表現するためにあるのだから。

posted by sponta at 11:28| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | リアルウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
時効だから記すが、

H氏とは日野皓正氏、ベースの先生は金澤英明氏。

数年後、ステージ上の中学生を叩いたとマスコミがとりあげたワークショップ。

日野氏、金澤氏は、日本人のジャズミュージシャンには珍しくスウィングしている。



山下洋輔氏をはじめとして、スウィングしない・できないジャズマンばかりの日本のジャズシーンである。
Posted by spt at 2019年12月31日 18:13
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