2009年03月27日

小説先祖供養_92

祈祷師、 シャーマン。
 住職の話を妻に告げると、妻は、「あのお坊さんはもともと学校の歴史の先生だったからかしらね」と、あきらめ顔で言う。教師にとって宗教もひとつの物語でしかないのだろう。
 すると、江本の叔母が言う。
「純之助さん。あなたがご住職に確かめたい気持ち、よく分かるわ」
「四十九日があの世に旅立たせる法要だっていうのに、うちのお寺なんか友美ちゃんがいなかったら、お父さんをあの世に行かすことができなかったのよ。お経料やご供物料を沢山取っておきながら、成仏させられないなんて、そんなの詐欺みたいな話よね。いくら見えない世界のことだって馬鹿にしてるわよ。おばさんなんて、友美ちゃんがいなかったら、今頃、お父さんに引っ張られてあっちに行っているかもしれなかったのよ」
「ええ…。まぁ」
「でも、友美ちゃん。友美ちゃんには、今お母さんがどこにいるか分からないの?」
「それがね。私、たまにお母さんが二階で歩く足音は聞こえることがあるんだけど、それ以外はさっぱり分からないのよ。やっぱり、当事者っていうのは、雑念が多くって見えるものも見えなくなってしまうようね」
「そうかい。それは残念だねぇ。私が言うのもおかしいけど、友美ちゃんは、お墓のことも、お仏壇のこともきちんとやっているから、きっとお母さんも成仏しているわよ」
「それならいいんですけどねぇ。何せ、心配ばっかりかけてた娘ですから、気になってあっちへ行けないんじゃないかしら。それに、たまには会いたいな。なんて思ったりもするんですよ」
 住職が去った和やかな雰囲気の中で妻の親戚が集まっている。ここにいる人たちは義母の魂がこの世界とは別の場所にいることを素直に信じている。しかし、霊能力を持った妻は義母と交流することは出来ず、成仏しているかどうかは定かではない。私にはやりきれない思いが残った。

posted by スポンタ at 06:48| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・先祖供養 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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