とはいえ、「トラフィックが増えればいい」という通信会社のステークホルダーを出自とする徳力さんの考えに、まったく同意できない。「同意できない」とは、「間違っている」と指摘するのではなく、「その件に重要度を認めない」「プライオリティーが低い」ということ。
私の考えは、「社会の木鐸となり、社会的正義の推進」するという新聞人を出自とするガ島さんの意見に近い。ただし、私は映画/テレビ/ラジオ/イベントプロモーション/舞台出身だから、「社会の木鐸になって、何者かのために尽力する」という行動原理はない。
私の出自が私に植え付けたものは、「ユーザーの多様性を想定しながら、ユーザーの利益を第一に考えること」である。
さて、メーリングリストにおいて、徳力さんは、軽々と、「芸能人ブログ」を捨象して、PPPのカテゴリーを形成した。
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私は薬事法関連で、「Payedされる側が形成してきた社会」を論じた。
曰く、Payする側は、「限られたメニューから商品を選択している」に過ぎず、Payedされる側が「世の中の主導権を握っている」という現実を指摘した。
その文脈でいうと、「芸能人ブロガー」の存在こそ、それをPPPの対象とするならば、「主導権を握られてしまう」という、広告主にとって、痛恨な存在なのだ。
ここで、徳力さんに従って、PPPの分類をしてみる。
分類の視点は、PPPによって被害を蒙るかどうか。である。
【芸能人ブロガー】
PPPで不誠実発信をした場合の損益:無限大
さらにいえば、テレビなどが多様な複数な広告主のスポンサードによって成立している現状を考えると、特定者の商品を宣伝することは、致命傷となりかねない。
タイアップレベルの報酬では、PPPは有名芸能人にとってメリットはない。
【実名者・固定ハンドルネーム者】
PPPで不誠実発言をした場合の損益:有
実名者のブログでは、その人が感じる重要度によって記事が書かれる。
たとえば、ゴマ系健康食品のCMがテレビで頻繁に流されているが、それをブログでやったらどうだろう。芸能人でなくても、そのような宣伝ばかりしている人。と、煙たがれる…。
昔でいえば、タッパーウェアのパーティーやアムウェイの販売をやる人。そういう評価・評判が立つ。
「笑いカワセミに話すなよ。ケケラケラケラケケラケラとうるさいぞ」という歌のフレーズではないが、そういうことである。
【無名者者・モバイルハンドルネーム者】
PPPで不誠実発言をした場合の損益:無し
実名でなく、固定ハンドルネームでない場合、PPPで不誠実発言をしても損益はない。
PPPをして報酬が得られればそれでいいし、不誠実発言が批判されれば、別のハンドルネームで発信すればいい。
「女子大生ブロガー」の坊農さやかさんの場合は、実名だったために批判をかわすことができなかった。彼女自身はプロモーションの仕事と単純にPPPの仕事を感じていたのかもしれぬが、「女子大生」・「ブロガー」なる語はプロモーションの外に存在する。
一方、最近流行りの「読者モデル」なる語は、素人の「読者」とプロの「モデル」という二つの語が合体しているので、誤解は少ない…。
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PPPにおける徳力さんは、「クライアントがお金を出すシーン」を最・重要視してカテゴライズしている。
だが、「ネットユーザーの利益」&「バイラルマーケッティング(PPPによる不誠実発言)によって、ネットユーザーが商品の価値を過大評価すること」の観点からいえば妥当性は否定しないものの、意味・価値はない。
問題は、「健全な言論/誠実な言論」である。
そこにおいて、
PPPであることが明示されなくても「誠実な言論」であればそれでいい。し、
PPPでなくても、「不誠実な言論」であれば問題。
とはいえ、「PPPであることが明示されれば、不誠実な言論も許される」。
PPPによって、芸能人生命に大打撃を蒙りかねない芸能人こそ、重要である。女子大生ブロガー・坊農さやかさんは、プチセレブの夢をPPP批判によって断たれている…。
徳力さんが主対象にしているのは、テレビ業界でいえば、タイアップの世界である。通信業者出自の彼にも、それがCMや宣伝とは違うことを理解されているのだろう。否、タイアップの世界とカテゴライズすることによって、広告代理店・メディア者たちの介入をさけたい。そういう意図がはたらいているのかもしれもない。
そういえば、ライブドアPJの主宰者も既存メディアとの対立を避けていたっけ…。
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【テレビにおける広告主の介在の仕方の代表例】
・番組提供
・CM
・タイアップ(商品提供):ドラマに製品を使ってもらう(無償提供)、クイズ番組の商品(広告費+商品提供)
・広報(情報番組で製品を話題にしてもらう):さまざまなバーター取引あり…。
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さて、インスタントコーヒーを飲む男性が、「違いの分かる男」とされるコマーシャルがある。本格コーヒーではなく、インスタントコーヒーというところが面白い。
私は、その企業が提供するテレビドラマ(テレビ朝日系・土曜ワイド劇場)の助監督・制作を務めたことがあるが、作品の中でレギュラーコーヒーを入れるシーンは登場させてはならぬ。というタブーがあった。
一方、衣装協力では、協力タイトルを入れることで、無償で衣装を借りてきた。また、テレビのクイズ番組のタイアップでは、商品メーカーが番組協力費(十数万円レベル)を提供しつつ、商品をスタジオに持ちこんでいた。
広報番組で、無償の場合は広告主は宣伝にならぬようにテレビ局に配慮する。有償の場合は、テレビ側が番組倫理に抵触しない範囲で、企業の意に沿うようにする。それが現場での出来事。やりとり…。
テレビ局たちは、お得意・広告主のために土曜日などに5分程度の企業広報番組をつくっていたりする。
それら、すべてがテレビマンとしての私がかつて体験してきたこと…。
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この50年間の民間放送・テレビで起きたことをイメージすれば、PPPも類推できる。
そのようなことを思っている。