2008年12月02日

小説先祖供養_11

第2章の最後です。

次回、12は欠番です。次は13.お恥ずかしい…。(^^;)
 三沢の墓は福井県敦賀市にある。東京に暮らしていると、墓参りのためだけにわざわざ福井まで行くという発想はなかなか起きない。両親が郷里を離れてから十年が経つ。その間、私は三沢家の墓参りをしていなかった。その年の春の彼岸に妻と義母に連れられて刈谷家の墓参りに行った。
 刈谷家の墓は大森の浄縁寺にある。私はお彼岸の時期に父や母の郷里にいたことはなかったから、お彼岸の墓参りは生まれて初めての経験だった。私は妻の父の遺骨が入っているお墓に神妙に手を合わせ、線香を手向けた。
「この人が新しい息子だよ」
 義母はお墓に話しかける。
 義母はけっして信心深い方ではなかったが、先祖供養だけはきちんと行いたいという希望をいつも持っていたし、それを実践していた。さらに六年前に夫を亡くしてからは、その思いが一層強くなったようだ。
「お墓参りもちゃんとやらないといけないですね」
 帰りの車の中でなんとはなしに義母に語りかけた。その時、なぜそういう気持ちになったのか、その理由を考えてもみなかった。だが、妻が義母のために三沢家の墓参りをしようと言い出した今、私は初めて明確な目的を持って墓参りをしようと決心した。
 義母の言葉を実行することが、死の床にいるかもしれない義母に対して、今私ができる唯一のこと。このまま何もせぬまま義母がこの世を去れば、私には後悔だけが残る。
 次の日の朝、私は会社を休み、妻とともに新幹線に乗った。
posted by スポンタ at 07:54| 東京 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説・先祖供養 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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