診察の結果、私はこの総合病院に入院することになった。
カテーテルを挿入した生活は、下手に動くと管の先端が陰茎の根元に当たって痛む。だが、小便にトイレに立つ煩わしさからは開放される。私はやれやれと肩をなでおろしたが、尿閉の原因を見つけるための検査が待っていた。
最初に行ったのが、陰茎の先から造影剤を入れてのレントゲン撮影。この検査はカテーテルの先から大きな注射器で造影剤を注入して、レントゲンを撮影するものである。膀胱に造影剤が注入されると、オシッコを漏らしそうになった時のような情けない気持ちになると同時に、下腹部がパンパンにむくみ、少し痛んだ。
次に、ぺタぺタうすくアイロンのようなコテを下腹部になすりつけて行うエコー検査を行った。
「とてもきれいな形の前立腺ですね」
検査技師によると、人の形がそれぞれ違うように、前立腺の形も千差万別だそうだ。モニターに映し出された私の前立腺は、テキスト通りでとても美しく、どこにも異常は認められないという。
次に待っていたのは、肛門と陰嚢のあたりに電極を貼り付け、陰茎の先から尿道に水を送り込む検査だった。電極を貼り付けるための剃毛がすむと、担当医はカテーテルの管を取り替えて膀胱まで少しずつ水を入れてゆき、人工的に尿意を作り出す。この検査によって、膀胱の圧力に対する前立腺の反応が筋電図を通して調べられる。筋電図のプリンターから、細長い紙に前立腺の反応が折れ線グラフになって出てきた。担当医はこの検査でも異常を発見できなかった。
入院三日目になっても、検査は続けられた。担当医は、「これはなかなかやらない検査なんだけど」と言って、内視鏡検査を行った。この場合の内視鏡とは、尿道にカメラを入れて実際に中の様子を見ることである。
担当医は陰茎をぐぐっと下に引っ張って膀胱までの尿道を一直線にすると、ファイバースコープを差し込む。痛みは他の検査に比べると格段に大きい。しかし、この検査でも何の異常も発見されなかった。
打つ手のなくなった担当医は、とうとう私に内科の診断を受けされることにした。
内科の医師は、聴診器をつかって一通りの診察をした後に、「百から七を引くといくつですか?」と、尋ねてきた。
私が「九十三です」と答えると、「今度はそれから七を引いて」と、続ける。
ここで計算を間違えたら精神病と診断されるに決まっているから、私も必死だ。頭の中で真剣に計算し、「八十六です」と答えた。
「どこも異常はないようですね」。内科医のその言葉に私は深く安堵した。
三日間の検査によって担当医が下した病名は、心因性の尿閉である。病名は決まったが原因は依然不明だから、栄養を補給するための点滴はと解熱用の座薬以外、尿閉を治療するための薬は与えられなかった。
2008年11月19日
小説先祖供養_03
第一章の導入部です。私は原因不明の病気に見舞われ…。
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