このドラマの本筋は、鈴木京香と中井貴一の「共演NG」である。
したがって、それ以外の要素は、不純物となる。
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観客は、元カレと元カノの20ぶりの再会に行方を知りたい・楽しみたい。
したがって、久しぶりに出会った元カレ元カノが、「撮影でキスをするとどうなる?」を味わいたいのであって、「新番組の視聴率がどうなるか?」に興味はない。
同じ共演NGとしても、師弟関係の物語はどうでもいい。
ましてや、若い俳優たちの不倫・恋愛関係など、物語の集中力を下げるだけ。
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シナリオライターは、共演NGなのに共演することになったベテラン男優・女優のドラマに集中すべき。
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それぞれの現在を表現するために、元カレ・中井貴一の細君を登場させるのは仕方ない。だが、新たな展開として元カノ・鈴木京香のもうひとりの元カレを登場させるのは、ドラマを複雑にするだけであって、ドラマの純度を下げる。
「三角関係のドラマ」ではない。「ヤケボックイに火がつくか、つかぬか」。
輝いていた青春のひと時を過ごした男女が、時を経て、それを恨みに思うか、それに感謝するかのドラマである。
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ユーミンの夫。つか編曲者の松任谷正隆氏がテレビに出ていて、彼の編曲のやり方を解説していた。
曰く、友人から電話が来て、「お前には指が7本あるのか?」「どうやって演奏しているのか?」と。
松任谷氏曰く、
・コードの抑え方に縛られたくない。
だから、右手のポジションで両手を使って弾いている。と。
そか。
Cの和音なら、ドミソ、ソドミ、ミソドという3種類の形があるが、それをイメージして弾くと「コード理論に縛られる」ことになる。
ファイナルファンタジーの作曲家のすぎやまこういち氏は、「ギターを使って作曲するのは、作曲ではない。作曲とは、純粋に頭の中でやるべき」と語っている。
コード理論は「解釈する人のため」のものであって、「作曲する人」はコードに縛られてはならない。
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だが、シナリオの場合は逆。
シナリオのコード理論にあたるものが存在しないため、(プロもアマも)好き勝手にやっている。
ドミナントモーションが解決せず、ドラマに進行感がなくなっても、それが商品として流通する。
意味のない転調もお構いなし。
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音楽っていいな。
すぎやまこういち氏・松任谷正隆氏ってすごいな。
なんて思っている。