2017年04月01日

純粋・倉本聰批判。

昭和のドラマツルギーが崩壊している。
倉本聰という名前はビッグネームだが、それは、「前略、おふくろ様」や「二丁目三番地」の頃の話であって、私は北海道に移ってからの彼をまったくもって評価しない。

娘の大学の研究は、「客観的で、妥当性のある評価」の実現だったが、その結論は、次のようになる。

1. 個人の主観は、〈主観的〉であり、集団の大多数にとって、〈妥当性〉があるとは限らない。

2. 「人間は神ではない」ので、〈集合知〉によって、「客観的で、妥当性のある評価」を実現しようとしても、SNSは広告代理店や組織団体による発信が大部分であり、〈妥当性〉は感じられない。
というか、大衆の大部分は、パッシブ(受動的)な個である。

3. そこで、アクティブ(主体的)な個。つまり、「人間(自分)の中の内なる神(内観)」によって、「客観的で、妥当性がある評価」を下そうと考えた。
しかし、それでは、〈主観的〉であるとの批判を免れない。そこで、評価基準に基づいた〈形式批評〉によって、「客観的で、妥当性のある評価」を実現しようと考えた。
つまり、〈評価結果〉は、個の主観によって生まれたものに過ぎぬとしても、〈評価基準〉には、「妥当性を期待できる」し、その重要度によって、〈客観性〉の度合いも吟味できる。


その先には、データーマイニングの手法として、〈細分化〉がある。
〈細分化〉によると、次のようになる。


例文:
有名シナリオライターの倉本聰氏の、一流テレビ局が制作する新作ドラマは、素晴らしい品質を備えている。

上記は、以下のような固有名詞、形容詞がリンクした形である。

有名シナリオライター=倉本聰=一流テレビ局=テレビ朝日=新作ドラマ=素晴らしい品質

このリンクを外すことが、〈細分化〉である。

有名シナリオライターだからといって、素晴らしい作品とは限らないし、
倉本聰氏の作品だからといって、素晴らしいとは限らない。
これは当然のことだ。

名プロデューサーの秋元康氏が、トップアイドルだと、前田敦子氏をたたえたとしても、トップアイドルの評価基準に照らし合わせて、「客観的で、妥当性のある吟味」をしなければならない。
美貌、歌唱力、ダンス力、演技力のどれをとっても、前田嬢をトップと評価できる要素は見当たらない。





データマイニングの〈断片化〉の手法は、歴史の分野でも、この手法が注目されている。

たとえば、信長公記という歴史的な信憑性が高い文献であっても、記述のすべてが事実に基づいているとは限らない。
つまり、中世の京都の深夜に、数千人の武士が行軍すれば、甲冑の擦れる音は、闇夜にとどろくに違いない。ならば、本能寺の信長が、寝込みを襲われることなどありえない。
歴史とは文献学だったが、文献をすべて信じてしまうのではなく、文献以外の研究も交えて、総合的に歴史を検証しようというムーブメントが起きているのだ。

いままでは、「細分化」という分析の手法だったが、構成要素と全体の関係をバラバラにして分析する〈断片化〉という手法が新しい。




倉本氏は、番組宣伝の出演で巻物を出し、年度別に何が起きたか、何か流行ったかなどの年表があり、それを登場人物の人生と重ね合わせて、ドラマに活かすという手法を行っていることを誇らしげに語っていた。

しかし、そのようなドラマではない要素が、観客の感動を呼ぶのだろうか。
倉本氏が脚本を書いた神楽坂を舞台にしたドラマでは、初回冒頭の10分以上が神楽坂を紹介するだけで、ドラマ的な要素が一切感じられなかった。

今回は、その「懐かし昭和版」ということだろうか…。



彼は、シナリオ作成にあたって「履歴書」を書くと、自らの手法を紹介していたが、それは、作家が創作をするための地盤としては必要不可欠かもしれないが、それを実作に使うなら、「設定」でしかなく「ドラマ」は発生しない。

「履歴書を書く」とは、黒澤明監督たちの手法として有名だが、それは、準備体操やキャッチボールのようなものであって、それをそのまま、脚本にしたら、「設定だけのドラマ」になってしまうのである。




今回の倉本聰氏の作品は、宮崎駿氏の「風立ちぬ」のようなものだろう。
「風立ちぬ」の後半で、昔、学生たちの間で歌うことが流行った曲で盛り上がる。だが、その時代を知らない世代にはまったく意味がない。ならば、作家の自己満足である。

ドラマは叙事詩的であってはならない。抒情詩的でなければ…。そのことをシナリオ界の重鎮が語らないのなら、日本のシナリオ界の低迷は今後もつづくに違いない。





posted by スポンタ at 12:49| 東京 ☔| Comment(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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